神に近い学問



「正しい」って、なに?と考えていて、まあ絶対に正しいことなんて世の中にはないわけで。ほぼすべての事象の「正しさ」は、そこにいる人間の「妥当とおもうこと」の総和で決まっていくわけで。またそれがまっとうなわけで。


科学の証明ですら、その「正しさ」は、反証されれば論破されてしまう。天動説は地動説に、ニュートンの重力論は相対性理論に、取って代わられる。「物質の最小単位は原子だ!」という「最後の存在確認」がなされてから数十年後、原子を構成する陽子と中性子と電子がみつかり、さらに中間子が見つかり、ついで反物質が見つかり、そしてそれらを構成するさらに小さい物質クオークが見つかり。そして最近では最小の物質は「ひも」だ、ということになってる。超「ひも」。やがて数十年もすれば、「ひも」を構成する細かいビーズか何かが発見されるのかもしれない。


そのように反証されて進んでいく、というのは科学理論の宿命なわけだ。


しかしこれに対し、数学の「完璧な証明」は、未来永劫絶対に、論破されることがない。直角三角形において、斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しいというピタゴラスの定理は、絶対に、未来永劫、正しい。それこそは、変更されることのない、まごうかたなき真理。


なんてすごい、神に近い学問なのだろう。はまってしまった人たちは、だから死ぬまで抜けられない。その数学という学問の凄みの一端が、門外漢にも分かりやすく、まざまざと書かれている本。


フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで