[]愛は盲目
同僚のMくんから聞いた話。
Mくんはその素朴な人柄で、年配の男性からとてもかわいがられている。
若くてスポーツマンなので、
前の職場では「お前、ハラへってるだろ」と
定年前の先輩がたから色々差し入れがあったらしい。
ある日の飲み会で、Mくんはいつものように
「M、食ってるか?」
「若いんだからたくさん食えよ」
と腹いっぱい食わされた。
そして先輩が「おい、M、まだ(二軒目)行くだろ?」と言うので、
(ちょっと腹いっぱいでしんどいな…、軽く飲んで帰らせてもらおう)
と思いつつ
「あ、はい」
と答えて着いていくと
ぎょうざのミンミンだった。
愕然とするMくん。
「いや、もう腹いっぱいですよ」と必死に断ろうとするM君に
酔った先輩が少し怒気を含んだ声で言った。
「いいか、他の誰に遠慮してもいい。
オレには遠慮するな」
「あまり食ってなかったろさっき。
やっぱり定食がいいか?」
あきらめたM君の前に
スタミナ餃子定食(ライス大盛)が運ばれた。
「いやぁ、本気でつらくてマジちょっと泣いたっす、ミンミン」
そう笑って話すMくんは、今日も素朴で爽やかだ。