博士の愛した数式





フェルマーの最終定理」を読んだ後では見劣りするかな・・・という先入観は吹き飛ばされた。よかったです。理系のかっちりした作家が書くべき小説、という意見が周りに多く、それはきっと少女マンガのような箱庭的美しさのせいだろう。オイラも川上弘美の「センセイの鞄」を思い出した。少女の、老紳士への恋。あと、文系の人間が数学の美しさについて書く感じが、ややロマンティックに過ぎる感じなんだろうか。それは、しょうがないよな。理系のヒトがそう言っているのを聞くと、オイラは文系かつ感傷的人間なので、やや小さくなってしまう。


しかし少女マンガの箱庭の力を見せつけているのも事実だ。ラスト数行で放たれる感情のほとばしりはとてもかっこいい。それにケーキの前でひざまずく老数学者の描写には、つかまれた。全体に泣かしにかかってる感たっぷりだけど、うまいと思う。





映画では寺尾聰が博士をやっているのはポスターその他で知ってて、その絵が頭から離れなかったけど、もう少し年いっててもいい。観てないけど。あとケレン味があまり感じられない人がいいと思う(寺尾さんはケレン味がいいのですが)。大滝秀治・・・だと老い過ぎか。あれくらいボケてしまった感じがいい。


フェルマーの最終定理」が参考文献としてあげられていて、そっちを先に読んでいたので、数論の魅力や素数の美しさなどがまったく引っかかりなく入ってきた。


しかし、数学の偉大な美について、「フェルマーの最終定理」以上の入門書は知らない。もっとこの本は知られてしかるべきだと思う。


フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで