さよなら、大阪市。



●風邪をやっと治した、と思ったらいつのまにか仕事も最終日になっていた。立ち止まって何かを考える暇がない。周囲の人から「今日で終わりやねー」と言ってもらうが、最終日という感慨がなかなか湧いてこない。山のように残ったこの残務処理は、今日一日でこなせるのか?ということに完全に意識が行ってしまっていた。退職の辞令も、定年退職の場合、南港・WTCまで行って局長直々に渡されるいかにもセレモニーな感じなのだが、オイラの場合中途退職なので、電話で呼ばれて二階に上がり、所長から「はい、おつかれさん」と手渡され、そのまま下に降りて普通に仕事をした。


●午後からは現場回り。新大阪を除けば、今後淀川区に来ることなんておそらく滅多にないわけで、これが最後かと思うと見慣れた風景も少し愛おしい。昼はどうしても食べておきたかった塚本のカレーおじやを食べに行く。





●これは卵、葱、玉葱、細く切った厚揚げ(旨い!)の入ったカレーうどん。味付けも、辛くなくてシンプルで、いつまでも飽きない味だが、ポイントは最下層にご飯が入っていること。カレーうどんを食べ終わったら、カレーおじやになっているのだ。これはどうしても食べ納めておきたかった。場所は塚本幼稚園の東にあるのだが、そんなこと書いても誰も行かないだろうな。ちなみに「福屋」といううどん屋さんです。とにかくうまかった。店はきれいだし、店主夫婦にお別れをして幸せな気持ちになって、現場督促を開始。


●督促先にも顔見知りが増えたし、何より慣れてきて、逆ギレされることがなくなった。やっと仕事が楽しくなってきたところだ。小さな声で話すことと、笑顔。が大事だ。笑っている人の頬は、なかなか張れない。この一年間料金督促の仕事ができてよかった。3年間の苦情処理と同量の経験を、一年でした気がする。職場の人間関係についても。貴重な一年だった。半年間ずっと払ってもらえなかったところから、2件支払いを頂く。そういうのは単純に嬉しい。のどの奥のトゲがとれる感じがする。


●5時頃帰ってきて少し整理をして、また現場へ。最後の集金2件。主任が一緒に行ってくれる。帰ってきて、書類の処理開始。途中、夜勤のKくんと話す。ギターはセミプロ級の腕前を持つ彼の話は、その世界のすごい人たちとの出会いに満ちていて面白かった。人生を変える出会いに気づき、そのことに意識的になったのは僕は25くらいからだ。彼はまだ21だ。これからどういうステージへ進むんだろう。彼を支える無数の音楽好きの大人たちが見える。早い段階で、関西で名を馳せてほしいと思う(そして自慢したい)。末恐ろしいし、とても楽しみだ。


●気がつくと終わったのは23時を回っていた。(だったわけです。Y君、R君ごめん。近いうちに!)疲れた体を引きずり自転車で帰る。結局一人で飲みつつ打ち上げかな・・・と思いながらペダルを漕ぐ道すがら、Tさん、そして同期K君の二人から暖かいメールが来て、ほろりとなる。Tさんには、今年に入って人間関係で悩んでいた時に「心を開く相手を間違えたらあかんよ」ということばをもらったのだった。今日も改めて思ったが、やはりうまくいかない人というのは、いる。最後まで、そうだったなあ。相性というものはあるのだ。なぜこんなにこだわっているのか。それは一度は心を開き好きになろうとした相手だからだ。明らかに自分のことを嫌っている、そういう人にまで心を開いていって自滅する、というのが僕のパターンだ。それでは味方にさくべきエネルギーが枯渇してしまう。自分を守り、好きな人たちを大事にするために、必要ならば、心は閉じていい。どうしても嫌いな人にまで心を開いていって、しっぺ返しを食らったときのダメージは、大きいから。そこは、防御してもいい。それは自然なことだ。子ども時代に学んでおくべきことを、三十路の今頃になってまだ少しずつ学習している。遅きに過ぎる。だが、しかたがないよな。


●同期K君は「同期10人衆」のリーダー的存在で、大阪市の面接試験のときからのつきあいだ。よく考えたら大阪市役所で初めて出会ったのが彼で、市職員最後の夜も彼からのメールで締めくくられた。


大阪市は、いまや様々な問題で全国からマスコミから叩かれまくっている。政治家ではない一兵卒だったオイラには、そのことについて語ることができない。ただ一つ言えるのは、表向き目につくダメダメな職員とまったく等量の、仕事ができる寡黙な職員たちが、罵詈雑言を笑顔で受け止めつつ、日々淡々と現場を支えているということだ。市を離れる僕にはこれ以上何も言う資格はない。ただ心の中で、応援しています。


赤川鉄橋を渡り、淀川を越える。橋から梅田・福島スカイビルの明かりがパノラマ状に煌々として見えている。百万ドルでなく、2万ドルくらいの、ステキな夜景だ。それくらいが今のオイラにはちょうどいい。4年間への惜別と、限りない感謝をこめて、


さよなら、大阪市
ありがとう。